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 夏の朝は、ククークッ、ククークッ、ククークッと鳴き続ける声に目を覚まされる。
生まれ故郷喜界島の鳩の鳴声、ファトゥー、クークー、ファトゥー、クークーと違うので、 気になりながら、ベッドから起きる。アメリカ人の使う英語と日本人の使う日本語はまったく違うのに、鳩の鳴き声は少し似ている。何でやネン、と思う。お日さんが東の山から顔を覗かせる少し前、山の天辺の方がうっすら明るくなりだす頃である。

 寝室兼、コンピュータールームの畳より少し大きい、1,6メートルx1,3メートルの横長の窓のブラインドを上げる。窓は開けなくてもよい。窓の半分は夜通し開けぱなしでブラインドだけ、下ろしている。ここモントレーの山奥にあるブラッドレーは山の砂漠とも呼ばれている。夏の昼間は毎日が45度以上の灼熱の暑さで、お日様が沈んで夜になると寒くなる。冷暖房設備のない私の家は夜の間に全部の窓を開けて、冷たい空気を取り込み、暑い日中は絶対に窓を開けない。この辺に住んでいた昔のアメリカインディアンの知恵をまねている。

 窓の向こうに見える電柱の天辺に1羽の鳩が停まって根気よく鳴いている。ククークッ、ククークッと響き渡る鳴き声は日の出前の雲ひとつない静まり返った空を目覚めさせるようである。いつも1羽である。離れているから、色ははっきり見えない。なぜかいつも南の方を向いて鳴く。「フリムン徳さん、早く起きてくださいよ、もうすぐ、お日さんが上りますよ」と鳴いているのかも知れん。でも私の部屋は北の方だから、私に鳴いているのではないようだ。恋人は南の方の山で寝ているに違いない。恋人に「ここにおるよ、早く起きて来いよ」「もう一度一緒になろうよ」と鳴いているに違いない。

 この頃ようやく、毎朝、ククークッ、ククークッ、ククークッと鳴き続ける鳩の謎がわかったような気がする。鳥類の愛情の深さである。うちの庭に来る何組かの鶉の集団が列をなして歩く時は、必ず、頭に冠のついた雄が列の後ろを歩き、周囲に目を配りながら、メスや子供達を守っている。あのウズラの愛情に似た鳩の愛情に違いない。
1年前に、2羽の鳩が庭へ何回か餌を探しに来た事がある。始めて見た時の色が印象に残って忘れられない。今までに見たこともない上品なベージュ色だった。
私はオナゴはんの着物姿が好きで、テレビに出てくる着物姿の女子はんの顔よりも着物の色と柄に興味がある。一番好きな色は少し光沢のあるベージュの色である。思わず、この鳩のベージュの色そっくりのオナゴはんの着物姿が思い出された。

 そうだ、あの時の2羽のうちの1羽に違いない。きっと内輪もめして別れたのだろう。
でも、寂しくなって、南のほうへ、別れて飛んでいったきりの連れを毎朝、電柱の天辺で、ククークッ、ククークッと呼び続けているのであろう。渋谷の駅前で毎日、死んだ主人を待っていたハチ公を思い出した。
ハチ公は、声は出さずに、じーっと駅の人ごみを見つめているだけだったが、この鳩はククークッ、ククークッ、ククークッと、毎朝、声を出して鳴き続けるのである。
そういえば、あの鳴き声には悲しさが、哀愁が感じられる。”恋人を待つククークッよ”

 鳩の鳴声を聞きながら、庭を眺めていると、野うさぎが2匹、3匹、4匹と集まってくる。たまにリスも来る。野生動物たちの朝御飯の時間である。テーブルは我が家の庭である。嫁はんが玄関のドアを開ける音が聞こえると思ったら、もう外で小さく切った人参を庭にばら撒いている。競争しながら、人参を食べ始める。ともう、7、8匹に増えている。時々、1匹か2匹、小さな野うさぎがいる。フリムン徳さんの心も顔も優しくなる。フリムン徳さんが戎さん顔になる時である。掌に乗るぐらいの小ささである。それが大きな野うさぎと同じ格好で、一人前の大人の格好で、人参を食べる。ほほえましく、また、自然に一人で生きる動物のたくましさに感心するひと時でもある。

 それは忙しそうに口を動かして食べる。どうしてリスも野兎も口を動かすのが早いのだろうか。明日は餌にありつけないかもしれない、いや、横取りされるかもしれない気持ちが早口にさせるのか。人参は小さく切ってあるから、軽い。動いて食べにくそうである。リスのように、前足で口元へ持っていっては食べない。前足で抑えることもしない。小さく切られた人参を口元で抑えながら食べている。それを見て、またこの私はロダンの考える人になったように、考え込む。同じ四つ足でも、木に登れるリスと木に登れないウサギの違いは餌の食べ方にもでているのだろうか。

 野うさぎは人参よりもネクタリンの桃が好きである。庭に植えてあるネクタリンの木にはまだ小さな青いネクタリンが沢山なっている。リスは素早く木に登って、忙しく食べている。野兎はネクタリンの木の根元あたりでうろうろしている。どうも、リスの食べ落としを待っているようである。

 それにしてもうちの庭に来る、野うさぎ、リス、鳩の色はどうして似ているのだろうか。 どちらも、地面から餌を探して食べる動物だから、地面の色に似た保護色なのに違いない。朝御飯を食べ終えた頃になると、真っ青な青空の高くに、禿げタカが、丸い円を描きながら、2羽、3羽、4羽と、悠々と凧のように浮かんで獲物を探している。
雲ひとつないブラッドレーのどこまでも深い青空である。
今日も暑くなりそうだ。あっ、今日は日本では七夕さんだ。   7-7−2012

by フリムン徳さん
プリムン徳さんはエッセイ本「フリムン徳さんの波瀾万丈記」を出版されています。

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